影山隆之,小林敏生著
心の健康を支える
「ストレス」との向き合い方
BSCPによるコーピング特性評価から見えること
A5判 152頁 定価(本体2,800円+税) 2016年12月刊
ISBN978-4-7724-1534-7
労働安全衛生法の改正により、2015年12月から、従業員50人以上の事業所では、事業者が労働者の心理的負荷を把握すること、つまりいわゆる“ストレスチェック”をすることが義務づけられた。ただし、その結果はまず労働者個人だけに知らされ、労働者の同意がなければ事業者は結果を知ることができない上、事業者はその結果を人事考課や配置転換の根拠にしてはならないとされている。必ずしも労働者が“ストレスチェック”を受ける義務はないのだが、事業者側には実施する義務があるということだ。
では、義務づけられたストレスチェックの結果をどのように活用することが、労働者と職場の利益にかなっているのだろうか。
大切なのは、ストレスを「なくす」とか「克服する」とかいうことではなく、労働者が自分のストレスを的確に理解してマネジメントをすることである。
本書では、労働者個人のコーピング特性に注目する。コーピング特性とは、ストレスフルな状況に遭遇したときに、どのような対処(コーピング)を選ぶことが多いか、という個人の傾向をいう。その特性を知るために、著者はコーピング特性を評価する質問紙“コーピング特性簡易評価尺度”(the Brief Scales for Coping Profile:BSCP)を開発した。本書では、そのBSCPの使い方とストレスマネジメントにおける活用法を解説する。
おもな目次
はじめに
1 ストレスの現代的理解
- 1.1 ストレスを感じている労働者は多い
- 1.2 そもそもストレスとは何か?
- 1.3 からだとストレス(生理学的ストレス論)
- 1.4 心とストレス(心理社会的ストレス論)
- 1.5 ソーシャルサポートの緩衝作用
- 1.6 ジョブディマンド‐コントロールモデル
- 1.7 努力‐報酬不均衡モデル
- 1.8 ストレス‐脆弱性モデル
- 1.9 NIOSHモデル
- 1.10 トランス・アクションモデルの意義
2 ストレス過程の測定:コーピング特性評価尺度BSCPの開発
- 2.1 職場でのストレスマネジメント方法とストレス過程の測定
- 2.2 職場のストレス要因の評価法
- 2.3 労働者のストレス反応の測定法
- 2.4 ストレス過程の媒介要因を測定する
- 2.5 コーピング特性とは何か
- 2.6 コーピングの類型
- 2.7 BSCPの開発経過
- 2.8 BSCP最終版のあらまし
3 BSCPでわかったこと
- 3.1 BSCPを使ってわかりそうなこと
- 3.2 BSCP得点の男女差および年齢との関連
- 3.3 コーピング特性と職業
- 3.4 首尾一貫感覚とコーピング特性
- 3.5 性格とコーピング特性
- 3.6 コーピング特性と対人関係
- 3.7 コーピング特性と飲酒・喫煙
- 3.8 コーピング特性と労働者が認知した職場環境
- 3.9 労働者のコーピング特性と精神健康度の相関
- 3.10 労働者のトラウマとコーピング特性
- 3.11 コーピング特性と自殺予防
- 3.12 コーピング特性と危機への対応
- 3.13 労働者のコーピング特性についてのまとめ
4 コーピング特性は変わるか,変えられるか
- 4.1 学生のコーピング特性の変化
- 4.2 定年前後の労働者のコーピング特性
- 4.3 コーピング特性を変える試み
- 4.4 BSCPの活用可能性
コーピング特性簡易評価尺度(the Brief Scales for Coping Profile:BSCP)
文献
おわりに