「Get a life」――。これまでのやり方を見直し,新たな解決策を獲得しよう,というのが著者のメッセージだ。不安定な対人関係や自傷行為などを発現する,この厄介な境界性パーソナリティ障害(BPD)に対し,これまで医療は勝利してきたとはいえない。そこに福音として登場したのが本書だ。第Ⅰ部はBPDを定義し患者の特徴の諸相を浮き彫りにし,第Ⅱ部は病因に関する研究,第Ⅲ部は治療に関する研究について概説する3部からなる。第Ⅰ部でうつ病など諸症状とのボーダーを明らかにした上で,第Ⅱ部で患者の多彩なリスクについて指摘する。第Ⅲ部では,それに基づく適切な個別的療法について論じ,徹底的なエビデンスをもとに,多彩な症状を見せるBPDについて,その病因や症状を分析し,それぞれについて効果的な処方を明らかにする。が,ねらいはその先にもある。個別具体的な解決だけでなく,それらを通してBPDに対する総合的なマネジメントを獲得するすべを提案する。患者の将来を保障し,治療の新たな地平を開こうとする本書は,BPD処方の手ほどきにとどまらず,患者の行く末を見据えたトータルなマネジメントのための戦略と手法を提案している。改めて本書のメッセージを聴いてほしい。Let's get a life!