精神分析臨床での失敗から学ぶ (単行本)
その実践プロセスと中断ケースの検討
セラピストとクライエントの関係において多くの臨床家は,一度ならず失敗に陥った経験があるだろう。予期せぬ治療の中断により終結を迎えられないこと,治療者の感情反応による行動化の誘発,転移・逆転移(反応)がもたらす治療の行き詰まり,等,本書はさまざまな面接の失敗について,原因とプロセス,その解明を真摯に考察した貴重な論考である。
□第1部 失敗から学ぶ
【総説】失敗から創造されるもの/日下紀子
【技法】精神分析臨床での私の失敗―心象と心情を分かち合うこと/村井雅美
【論考】心痛の現実化としての失敗―症例ドーラから学ぶ/山口昂一
□第2部 失敗を振り返るとき
【臨床論文】失敗と逆転移としての「失敗」感/松本陽子
【臨床論文】精神分析的心理療法への移行の難しさをめぐって/田中克昌
【臨床エッセイ】「考える」ことをめぐる初学者の過ち/石井佳葉
【臨床エッセイ】精神分析的心理療法への憬れ,その陥穽/元木幸恵
□第3部 コンテイニングの難しさ
【臨床論文】心的退避の世界に治療者が絡めとられること/岡田淳子
【臨床論文】治療者はどこにいるのか—コンテイニングの失敗とエナクトメントの完遂の側面から/北岡征毅
【臨床エッセイ】投影が浮き彫りにするセラピストの失敗/岸本和子
【臨康エッセイ】患者の心を知ろうとする心構えの大切さ―転移を生かすために/豊田原規
□第4部 届き難い患者との間で
【臨床論文】自閉症スペクトラムへの精神分析的アプローチの試み/黒河内美鈴
【臨床エッセイ】わからなさを問い続けること/真崎由美子
【臨床エッセイ】孤独に耳をすます/星野修一
【臨床論文】自死をめぐった囚われから自由になることで“あやまち”を問い直す―“意味のある偶然”から“必然”へ/坂井新
□終 章
私たちは,成功した精神分析から学ぶことができるのだろうか/松木邦裕