こころの臨床現場からの発信(精神療法 増刊第9号)
“いま”をとらえ,精神療法の可能性を探る
――そんな疑問から、今回の企画は始まった。
多様性の尊重が叫ばれる中、コロナ禍の混乱は人々の異なる価値観や危機感による対立を際立たせた。本書では、こころの臨床に携わる治療者がそれぞれの場所で患者(クライアント)と関わる中で、いわゆる肌感覚からとらえた変化や課題や精神療法の可能性を著者ご自身の言葉で語っていただく。
第1部 臨床現場からの声
Ⅰ 精神療法の視点から“いま”をとらえる
臨床で抱えていくもの―変容の臨界点での感覚から 岩宮恵子
「子ども臨床」に戻って思うこと 山登敬之
創造を導く制約の再構築―精神分析的心理療法の観点から 遠藤裕乃
児童養護施設から社会と個人を眺めてみた 大塚 斉
社会適応という自己不適応―分断を乗り越えるためのトラウマインフォームドケア 野坂祐子
悩みの多様性とその回復をめぐって 北西憲二
21世紀の人格構造をめぐって 牛島定信
「成長」の終わりと「人格」の消滅 高木俊介
温故知新―未来を探れ 大西 守
コロナ禍と精神療法:対立をこえて 北村婦美
境界線に関する考察 林 公輔
「悩みがあったら相談に来てください」:この呼びかけの弱点は何か―自殺対策に資するさまざまな研究アプローチの試み 岡 檀
僕の臨床―精神療法的でありたいと願う 田中康雄
臨床の現場はいつも騒々しい 信田さよ子
Ⅱ 精神療法の可能性を探る
コロナパンデミックによるグループ実践の変化―私の感情体験から見えてきたもの 鈴木純一
本邦における集団精神療法の現状と課題 藤澤大介・田島美幸・田村法子・近藤裕美子・大嶋伸雄・岡島美朗・岡田佳詠・菊地俊暁・耕野敏樹・佐藤泰憲・髙橋章郎・中川敦夫・中島美鈴・横山貴和子・吉永尚紀・大野 裕
「ひきこもる能力」を育む―精神分析の立場からコロナ時代のひきこもり支援を考える 加藤隆弘
精神療法についての個人的感想―34年前の私の症例報告から 原井宏明
精神療法としてのアドボケイト―診断書の技術 井原 裕
日常臨床に生かす認知行動変容アプローチ 大野 裕
アメリカ精神療法最新事情―臨床現場からの声 大谷 彰
お別れの時間 笠井 仁
性別違和の臨床において私が悩むこと 針間克己
精神医学のいまに精神分析を活かす 鈴木 龍
こころの臨床,現場から 山中康裕
統合失調症を併存するがん患者の臨床 岸本寛史
探求方法としての書くこと 小森康永
精神分析的精神療法と未来―Pluriverseとローカルなもの 富樫公一
情緒が息づく空間 その温もり 森さち子
第2部 こころの臨床とメディア
精神科医がSNSで発言することの社会的意義について 斎藤 環
専門家として情報発信すること 松本俊彦
テレビの作り出す非適応思考にどう対処するか 和田秀樹
こころの臨床現場と,その外の現場から 星野概念(俊弥)
疾患啓発か疾患喧伝か,そのぬかるみに足を取られて 香山リカ
ジャーナリストも心を傷つけている 松井 豊
第3部 座談会 平島奈津子・井原裕・信田さよ子・藤澤大介